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EPISODE 45:アレキサンダーとの生活

マリーの活動範囲は拡がる一方でした。

しかもマリーは、難なく、というよりむしろ、イキイキと仕事をこなしていました。

彼女にとっては夫であるアレキサンダーと一人息子のオーランドの存在が、すべてのエネルギーでした。

特にアレキサンダーは、16歳で知り合って以来、公私ともに、マリーの良きパートナーでした。

彼がマリーを励ます方法は2通りあります。

彼女の作品をメッタメタに批判(もちろん、建設的な批判なのですが)するときと、お世辞としか思えないほどほめちぎるときと・・・。

マリーは「私がいつも、自信をもって仕事に取り組むことができたのは、批判よりもお世辞の数が多かったから・・・」と、感謝していました。

そして、反対にアレキサンダーが自信を喪失してしまったときは、マリーが、このアメとムチ式で、彼を励ますことになるのです。うまいことに、2人はそれぞれめげる時期がずれていました。

公私ともに、いつも一緒にいる2人でしたが、サリー州にある自宅からロンドンの仕事場へ通う、往復2時間だけは、別々の車。それが2人の関係を新鮮に保つ、ひとつの秘訣でもありました。

ここだけの話・・・マリーとアレキサンダーは、よくケンカをしました。それも派手な。「一緒に仕事をしていると、ケンカの種がつきないの。でも、ケンカの原因になる話題がいろいろあるって、それはそれなりに楽しいものよ。」なんて、マリーはあっけらかんとしたものです。「だって、ケンカの原因がいつも一緒で、毎回、同じようなグチを繰り返してしまうようになったら、救いがないもの。」と。

とはいえ、レストランでアレキサンダーに腹を立てたマリーが、別のテーブルに席を移して、お店で飼っているネコを相手に一緒に食事をしたり、彼にワインを投げつけたり(それも何本も・・・。後でびっくりするような請求書が手許に届いたことは言うまでもありません)。

でも、アレキサンダーはマリーにとって、いい指導者でした。女にとって、つきあう男性の影響は、はかり知れません。

マリーは、「アレキサンダーとの出逢いが、私の人生のはじまり」だったと、ず~っと思っていました。

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