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EPISODE 21: プロモーション・ツアー

ピューリタン社での最初の仕事は約50000着の注文という大きな成果をおさめました。

マリーの次なる仕事は、この新作デザインをアメリカ全土にプロモーションするためのツアーでした。ピューリタン社との交渉ごとは、その契約から難航しましたが、今回のツアーでもまた新しい問題が持ち上がりました。

それは宣伝費に関する横やりでした。わざわざモデルまでロンドンから呼ぶことはない・・・現地モデルを使えば、経費も準備のための時間も減らせるというのです。

スケジュールによれば、21日間で30回も飛行機に乗ることになっています。そんな強行軍で、とにかくショーを無事に終えようとするならば、モデル・ドレス・スタッフがセットで移動するのが最も効率的だというのがマリーの考えでした。最悪の場合、音楽は妥協するにしても・・・。モデルたちがマリーやドレスやルックを理解し、演出方法を飲み込んでいないと、ショーはスムースに運ぶはずがありません。

「ツアーを値打ちのあるものにしなければ、やるだけ経費の無駄になる。」夫のこのひとことでピューリタン社もようやく折れてくれました。

プロモーション・ツアーがはじまりました。でも、最初はアメリカでのマリーの人気がどれぐらいのものなのか、誰にも、当のマリーにも予想できませんでした。少なくとも最初のショーがはじまるまでは・・・。マリーの服を仕入れたお店の担当者ですら、せいぜい2~300人も来てくれればと思っていたのです。

ところがいざフタをあけてみると、2000人を越す若い女の子たちが押しかけワァワァ、キャアキャア大騒ぎ。ショーの後女の子たちがドレスを買う段になると、もう大混乱。なんとそのお店では500着もの服が飛ぶように売れました。

どこに行ってもこんな具合でした。若い女の子たちはマリーに箱入りのキャンディとか、心をこめたプレゼントをもって来てくれたり、スクラップブックを見せにきたり・・・。誰もかれもがマリーやモデルたちのサインを欲しがりました。時には大混乱になって警察が呼ばれることもあったほどです。スケジュールが決まったときから、相当ハードなツアーになることは予想していましたが、まさかきちんと食事をする時間もなく、4時間も寝られれば上等なくらい厳しい仕事になろうとは誰も想像していませんでした。

最初の段階ですったもんだしたものの、息のあったモデルたちを連れていったことで、すべてが円滑にエキスパートらしく運ぶことができました。

今までやってきたショーと同じだけの効果をあげることができてマリーは満足でした。

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