同じ世代のマリーによって選ばれた「若い人たち好みのファッション」や「それに合うアクセサリー」をそろえたブティック「バザー」は大盛況。特にオリジナルものは、またたく間に売り切れてしまいました。
その中にはマリーがはじめてデザインした商品も1点だけありました。それは一着のパジャマでした。そして、このパジャマがファッション誌「ハーパース・バザー」に取り上げられたのです。このできごとがマリーたちをどれほど喜ばせ、力づけたことか・・・。
「バザー」の自慢はもうひとつ。
毎週土曜日の夜に替えるウィンドウディスプレイがそれです。人が立ち止まって見てくれること、それを楽しみにしてくれること、人々の話題になることをマリーたちは望んでいました。うれしいことに、このウィンドウディスプレイにもファンがいて、ディスプレイに使えそうなおもしろいグッズの情報をいろいろ提供してくれたりしました。そんな未知の協力者やひとクセあるインテリ、有名人といった興味をそそられる顧客たちの出入りで、いつしか「バザー」の性格みたいなものが造られていったのです。
やがて、ひとつの問題にいきあたりました。商品をストックしておきたくても、卸屋には気に入ったものがなかなか見あたらないのです。しかたがないのでマリーは自分で作ったものをもっと並べてみようと思い立ちました。カットを習うために夜学にも通い、ミシンを買い入れ、パートの裁縫師も見つけました。
その頃からだんだんマリーはデザインに没頭するようになっていきました。マリーの新しい服が夕方6時に店に並べられることが、人から人へ知れ渡るようになると、その日の作品が晩には売り切れてしまうくらい評判になりました。
マリーたちが「小売店」としてスタートした「バザー」は、こうして新しい方向に向かって歩きはじめたのです。
そもそも「バザー」はマリー、アレキサンダー、アーチーの3人ではじめたお店でした。アレキサンダーとアーチーは「バザー」以外にも、有名なレストランやコーヒーハウスを経営していて、どれもとても繁昌していました。でも、「バザー」の急成長ぶりは比べものにならないほどのすさまじさでした。
新しい年を迎えた時、3人は重大な決心をしました。力を合わせてファッションビジネスに取り組もう、「バザー」を育てていくことに専念しよう・・・と。
時代はファッションの大きな変革期を迎えようとしていました。