ホテルに落ち着いたマリーは、早速、滞在中のスケジュールの確認に取りかかりました。東京・大阪(なんと大阪へは新幹線で日帰り)で予定されているレセプション、テレビ出演、新聞社・雑誌社等とのインタビューやら記者会見。ぎっしりつまった予定の中に、日本のブティックや百貨店の訪問も組み込まれていました。
売場の視察だけではなくて、日本のファッション事情も見ておきたい・・・はじめて訪れる国に、自分のフィールドであるファッションの分野からアプローチしたいとマリーは考えたのです。
さて翌日。
記者会見に臨んだマリーに、矢継ぎ早に質問が浴びせかけられました。彼らが一様に聞きたがったのは、ファッション革命を成し遂げたマリーのファッション感、そして日本の女性に対する印象です。
マリーはこう答えました。「ファッション革命と言われても、特別なことではありません。ミニは時代が待ち望んでいたモノだし、お金がなくてもファッションが買えるようになっただけ。私は人一倍飽きっぽい性格だから、女性たちが意識の底でもっている欲求や時代感覚を人より早くキャッチできたのだと思う。ファッションはルールではなくて、感覚というのが私の考え。」
「日本の女性はエレガントでチャーミング。目に特徴があるから、それを強調したら・・・。メークは上手だけれど、もっと楽しんだほうがいいみたい。」と。
この会見で、記者たちは意外な一面を発見しました。
それは、マリーのイメージが、自分たちが勝手に思い描いていたモノと大きくかけ離れていることです。彼らには、「大胆な女性解放をやってのけた」「大きな名声と莫大な富を手にした」「英国勲章を授けられた」マリー・・・という先入観があったからです。
でも今、目の前にいるのは、恥ずかしそうに、ひとことひとこと小さな声で受け答えするマリーとそんな彼女を暖かい目で見守るかのように付き添っているアレキサンダー・・・。その様子を見た記者たちは、「本当の彼女」をもっともっと知りたいと思いました。
あの才能とパワーがどこに秘められているのかを・・・。