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EPISODE 26:エリザベス女王からマリーへ・・・

それはマリーにとってはまさに晴天のヘキレキとも言えるような知らせでした。

あまりにも唐突で、あまりにも意外すぎて。自分のこととして受け止められるようになるまで(随分長い間)、彼女は茫然としていました。確かにここ数年、「いくつかの成功をおさめてきた」という実感はマリーにもありました。

でも、まさか・・・。

その「まさかの知らせ」とは、あのイギリスが産んだ世界的な音楽グループ「ビートルズ」とともに、エリザベス女王からO.B.E(英国王室第四等勲章)が授けられるというものでした。ご褒美の理由は、400万ポンド(約32億円)もの外貨をデザインのロイヤリティとして彼女が稼ぎ出したこと、とか・・・。

20歳をちょっと出たばかりのビートルズの面々が、リバプールサウンドで世界の若者の心をとらえたとするなら、マリーはミニスカートをはじめとしたファッションの世界でそれを成し遂げたと評価されたのです。

素顔のマリーは、華奢で身長も155cmと小柄。気取りがなくて、自分に対して素直。そしてある意味では、とてもナィーブな・・・29歳の女性でした。けれど時には、「規則は破るために、脚は見せびらかすためにある」なんて過激な発言で、周囲を煙に巻くような世界的なデザイナー。そんな彼女が、エリザベス2世からじきじきに勲章を授けられる時、どんなファッションで現れるのか・・・世間の注目はその1点に集まっていました。

当然、マリーは悩みました。そして、さんざん悩んだ挙げ句、自分でデザインしたシンプルなミニのドレスで出かける決心をしたのです。そのドレスはマリーにとてもよく似合っていました。この受賞に対してマリーは、「意外だったけれど、とてもうれしかった。」と、素直なコメントを残しています。

気がつけばマリーは「今世紀(20世紀)、イギリスが産んだ最大のファッション・クリエーター」と呼ばれるまでになっていました。新聞各紙の経済欄でも「マリーの事業」はヘッドラインを飾り、それはファッションページの行数を上回るほどでした。でもこの時、彼女らはさらに次の冒険の構想を練っていました。

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